電気泳動とは?原理や分析手法の種類

2022/2/3

電気泳動とは

電気泳動とは、溶液中の電荷をもった物質を電場のもとで移動させる現象をいいます。バイオ系の研究でよく用いられており、核酸(DNA・RNA)やたんぱく質などのように水溶液中で帯電する物質に電圧をかけて移動させながら、大きさで分離して分析する重要な手法です。
例えば、核酸は水溶液中ではマイナスに帯電するとものと知られています。電気泳動措置の中の四角くい容器へ熱い状態にあるゲルを入れ、ゲルの上から装置に備えられているコームを差し込み、ゲルが固まった後にコームを外すと、穴の開いたゲルが出来上がります。開いた穴の部分をウェルといいます。ゲルのウェルに核酸溶液を注ぎ込み、ゲルにプラスの電圧を掛けると核酸は水溶液中でマイナスに帯電しているので、力が働き陽極へ引っ張られていきます。この時、核酸断片の大きさによって移動度が変わります。そのままでは核酸の大きさは分かりませんので色素を使用して核酸の染色をおこなってバンドとし、同時に様々な大きさの分かっている核酸の混合物(ラダー)を泳動して核酸断片との位置を比較することにより核酸断片の大きさ(塩基対:bp)を推定することができます。電気泳動法は、このようなDNAの性質を利用して溶液中にどれくらいの大きさの核酸が存在しているのかを確認し、実験の結果を考察することができます。

電気泳動が活用される場面

電気泳動は分子生物学分野で広く利用されており、核酸、タンパク質などを解析する際にとても重要な実験です。核酸やタンパク質には様々な大きさがあるため、これらをサイズ別に分離する際に用いられます。
核酸を増幅する際、PCRという機器を使用するのですが、増幅される核酸は1種類のこともあれば2種類、またはそれ以上になることもありますので実験によってどのような大きさの核酸が存在するのかが問題となります。電気泳動では目的としている核酸がちゃんと増幅しているかの確認の他に、いろいろな核酸が含まれている場合にそれらを分離するためにも使われます。遺伝子を部分的に欠損させたり挿入させたりする時は、電気泳動で長さの確認をすることもあります。

電気泳動の原理

電気泳動とは、溶液中の荷電物質が電場のもとで移動する現象であると言えます。
ここでいう荷電物質とは緩衝液(バッファー)成分を除くペプチド・タンパク質・核酸など、水溶液中で+又は-の荷電を持つ物のことで、いわゆる電気泳動の試料です。ただし水溶液中では試料が拡散してしまうため支持体として膜やゲルを用い、これらの中を荷電物質(試料)が移動していく形態をとることがほとんどです。支持体(膜・ゲル)中の試料は、直流電場下で、その性質(形や荷電状態や分子量等)に応じて自分の電荷と反対の電極へ向かって移動します。その際の移動速度が物質によって異なることで各々が分離されるのです。
支持体であるアガロースゲル又はポリアクリルアミドゲルは網目状立体構造をもち、試料に対し分子ふるいの役割を果たします。小さな物質は速く、大きな物質は遅く移動し、分子量に応じた分離が可能です。この時、移動距離と分子量はほぼ反比例するので、電気泳動を用いて分子量の決定も可能です。
また分子ふるいをかけずに荷電状態や形状に応じた分離方法もあります。
この様な要因をいろいろ組み合わせて試料中の各成分を分離することが出来ます。例えば未知なたんぱく質を含む試料について、1次元目(X方向)で等電点による分離(等電点電気泳動)、2次元目(Y方向)に分子量による分離(SDS-PAGE)を行うといった2次元電気泳動を行うことにより、より正確に試料中成分の推定や試料間の比較をすることができます。
電気泳動はこの様な分離原理を利用して分子量決定をはじめ等電点や純度決定、サンプル中の各成分の定量・精製等に利用され、核酸やタンパク質の主たる分離・分析法となっています。

電気泳動の種類(手法の種類について解析する)

最も一般的な電気泳動としてゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動があります。

ゲル電気泳動法とは、核酸やタンパク質等の生体分子を高分子ハイドロゲル中にて電気泳動し、分子サイズに依存する泳動度の違いを利用して分離する電気泳動法です。ゲル電気泳動法には、アガロースゲル電気泳動とポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)の大きく2つがあります。
アガロースゲルを使用するアルガロースゲル電気泳動は、生物から核酸を抽出した際、その確認目的で用いられます。また、PCRによる核酸増幅の確認にも用いられます。
PAGEでは、特に、SDS(Sodium Dodecyl Sulfate;ドデシル硫酸ナトリウム)という界面活性剤を用いたSDS-PAGEと呼ばれる電気泳動が非常に有名です。 SDS-ポリアクリルアミド(SDSという界面活性剤の一種を加えた、ポリアクリルアミドのことをいいます。SDSを加えることにより、試料タンパク質の形をほどき、又、負電荷を一様に分布させることにより、完全に分子量依存で(形に依存しない)分離を行うことを可能にする支持体です。)
アガロースゲルによる電気泳動は、核酸は分子量の違いにより分離され、その後、エチジウムブロマイドといった色素による染色で検出します。(エチジウムブロマイドを先に加えておいたゲルを用いて電気泳動を行うこともよくあります。
この場合、アガロースを冷やして固める前に、エチジウムブロマイドを加えて混ぜておきます。エチジウムブロマイドは、平面構造を持った分子で、核酸に挿入(インターカレーション)する形で結合します。エチジウムブロマイドは二重結合を多く持っており、UV(紫外線)によって蛍光を発するため、検出が可能になります。)

キャピラリー電気泳動法は、毛細管を用いた電気泳動法です。
細い管の中で電気泳動を行うため、物質の拡散を抑えることができ、高い分離能を実現しています。また、1回の測定に用いる試料が微量で良いという長所があります。
緩衝液で充たされた内径50μm程度のキャピラリー内での電気泳動は、特にジュール熱に起因する影響を減少させることができ、また、高電圧を印加することが可能で高分解能で分析時間も短いという利点があります。
この方法を応用した例として、自動塩基配列解析装置(DNAシーケンサー)があります。この装置では特殊な高分子の水溶液を充填した毛細管内で分子ふるい効果を作り、試料中のDNAをその塩基数の順に分離することができます。
また、光学異性体の分離にも有利な手法であることから、薬学や食品分野への応用が進んでいます。

まとめ

電気泳動は、アミノ酸、ビタミン、無機イオン、有機酸、界面活性剤、ペプチド、タンパク質、糖類、オリゴヌクレオチド、DNA制限酵素フラグメントなどの化合物の分析、分取に利用されます。
電気泳動は分離原理を利用して分子量の決定をはじめ、等電点や純度決定、各成分の比較・定量・精製確認等に利用され、タンパク質や核酸の主たる分離・分析法となっています。