FFPE標本からのmiRNA解析
FFPE標本からの遺伝子解析技術を確立できれば、過去の膨大な疾患データを活かした遡及的な研究が可能となり、疾患の治療や予防に大きく貢献できるものと考えられ、注目を浴びてきました。しかしながら、通常FFPE標本は、長期間保存されたものが多く、その作製方法によっては遺伝子(核酸)が高次に架橋された状態となるため、FFPE標本から抽出した遺伝子、特にRNAは分解が進んでしまっており、その定量的な解析、評価は難しいといわれてきました。ところが、実際には抽出工程でRNAが分解してしまうことも多いため、東レでは最近では以下の点を工夫した解析方法を確立しています。
- 品質の良いRNAを抽出する。
- 抽出されたRNAが解析に値する品質かを見極める。
- サンプル間での検出バイアスを抑制した処方でサンプルを調製する。
1. については、従来は熱を加えたり長時間の処理が必要であった処方を、常温で短時間で抽出する改良処方に工夫することにより、従来の処方より分解画分の割合が少ないRNAを抽出することができるようになっています(下図)。2. については、RNAを電気泳動して、分解画分、架橋画分の存在有無、存在割合を確認することで、その品質を見極められることができ、解析しても正しい結果が得られない可能性が高いRNAを事前に排除することができます。また、3.については、特にmiRNAは鎖長が短く、分解に対して非常に強いため、適切なRNAの品質基準を設け、基準をクリアしたRNAに対して増幅を行わないプロトコルを採用することにより、貴重な情報が得られる可能性が広がっています。
図1 抽出処方とRNAの品質
図2 FFPEからのmiRNA解析例
(B)定量RT-PCRとの比較(胃癌FFPE組織における腫瘍部と正常部のmiR-21発現