アプリケーションノート

Vol.7 | 3D-Gene®のmiRNA配列に対する検出特異性

DNAチップは、プローブと対象となる(ターゲット)遺伝子配列のハイブリダイゼーションを網羅的に検出するバイオツールであり、その性能として感度のみならず検出の配列特異性が極めて重要視されます。このため、DNAチップの作製においては個々の遺伝子に特異的なプローブ配列の設計が重要なポイントの一つであり、DNAチップメーカーは各社工夫した設計アルゴリズムを用いて検出感度と特異性を上げるべく、努力しています。例えば検出の対象がmRNA、またゲノム配列の場合には、プローブ長を50mer以上にしたり、検出対象の配列の前後をまたいで複数のプローブを設計するなどによって一定の効果を挙げることができます。しかしながら、miRNAは20~25塩基の配列によって規定されているため、配列特異性を狙ったプローブ設計は非常に難しくなります。すなわち、matureなmiRNA配列を検出するためのDNAチップにおいて配列検出の特異性を上げるためには、プローブ配列の設計のみならず、基板の検出感度とミスマッチハイブリダイゼーションを防ぐ検出プロトコールが重要です。3D-Gene®は柱状構造の基板とハイブリダイゼーション中のビーズによる溶液の攪拌によって、特異的なmiRNA検出を可能にしています。特にmiRNAの中でも配列相同性が高く、ファミリーとして分類されているヒトのlet-7の検出例を図1に示しました。let-7はC.elegansで発見された、最初のmiRNAのひとつであり、ヒトでは図1に示すように極めて配列相同性が高い複数のファミリー遺伝子があります1)。がん組織やがん細胞において発現が変動することが多く報告され“oncomiR”とも呼ばれている、生物学的にも重要なmiRNAです2)。3D-Gene®は、これらのlet-7ファミリー配列を高い特異性をもって検出できることが示されました(図2)。また合成核酸配列のみならず、実際の生物検体由来のRNAについても、ファミリー間の配列を検出できることが示されています(図3)。このように3D-Gene®は微妙な配列の違いを網羅的に検出し、検体間の遺伝子プロファイルの差を鋭敏に、手軽に探索できるツールとして活用していただくことが可能です。

参考論文:

  1. 1) Science 294 (5543): 853-858. 2001
  2. 2) Mol. Cancer 6:60, 2007

ヒトlet-7ファミリーの配列

図1 ヒトlet-7ファミリーの配列

赤字部分はlet-7aに対するミスマッチ塩基を示す

3D-Gene®によるヒトlet-7ファミリーの検出の特異性

図2 3D-Gene®によるヒトlet-7ファミリーの検出の特異性

let-7 ファミリーのmiRNA配列を化学合成し、個別に標識した上で3D-Gene®で検出した。各プローブ配列によって得られたシグナルの強度を完全一致配列の値で正規化し、比率を示している(%)

3D-Gene®によるヒト膀胱total RNA(Ambion社製,Cat#AM7990)とヒト胎盤由来total RNA(Ambion社製

図3 3D-Gene®によるヒト膀胱total RNA(Ambion社製,Cat#AM7990)とヒト胎盤由来total RNA(Ambion社製

Cat#AM7950)中のlet-7ファミリー検出結果。数値は3D-Gene®による検出シグナル強度。棒グラフで比較を示した。