アプリケーションノート

Vol.5 | ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本からの遺伝子発現解析

ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本は、世界中に数多くの検体が保管されており、それらを遺伝子発現解析に有効活用することに対して、期待が高まっています。FFPE標本からの遺伝子発現解析技術を確立できれば、過去の膨大な疾患データを生かした遡及的な研究が可能となり、疾患の治療や予防に大きく貢献できるものと考えられます。しかしながら、FFPE標本から抽出されたRNAは一般に品質が低下しており、定量的な評価は難しいとされていました。そこで我々は、DNAチップ3D-Gene®の特長である感度の高さを生かし、FFPE標本からでも、網羅的な遺伝子発現解析を定量的に実施できる技術を確立すべく、開発を進めてまいりました。

抽出処方とRNAの品質図1 抽出処方とRNAの品質

FFPE標本の作製条件や保管条件によって、抽出されるRNAの品質は様々であり、条件によっては遺伝子発現解析を定量的に実施できない場合もあります。FFPE標本から定量的な遺伝子発現解析を行うためのポイントとしては、(1)品質の良いRNAを抽出する、(2)抽出されたRNAが解析に値する品質かを見極める、(3)バイアスを抑制した処方でサンプルを調製する、の三点が挙げられます。(1)については、独自の抽出処方を開発し、従来処方より分解画分の割合が少ないRNAが抽出できるようになりました(図1)。本技術により、定量的評価が可能なRNAを抽出できる可能性が高まったといえます。

(2)については、RNAを電気泳動して、分解画分、架橋画分の存在有無、存在割合を確認することで、その品質を見極められることを見出しました。本技術により、解析しても正しい結果が得られない可能性が高いRNAを事前に排除することができます。また、(3)については、従来の「RNAの状態の良し悪しに関わらず、少量からできるだけ多く増幅して解析する」という発想を転換し、解析に値する品質と確認したRNAを、バイアスを抑制した処方で増幅することにより、各遺伝子の存在比を保持したサンプルを調製できることを見出しました(図2)。
これらの技術および高感度DNAチップ3D-Gene®を組み合わせることで、FFPEから抽出したRNAからでも定量的な遺伝子発現解析が可能となりました。

図2 マウスFFPEからのmRNA解析例(A)凍結組織との相関、(B)定量RT-PCRとの比較
※ FFPEは10%中性緩衝ホルマリンで2日間固定後ブロックを作製し、室温で6ヶ月保管したものを使用。

さらに、近年大きく注目されているマイクロRNA(miRNA)の解析につきましても、サンプル調製処方を工夫し、高感度DNAチップ3D- Gene®を用いることで可能となりました。開発したmiRNAサンプルの調製処方は、トータルRNAからsmall RNA画分を分離することなく、また増幅操作を行うことなく実施するため、遺伝子発現解析と同様、定量的に解析できるのが特長です。図3(A)は3D- Gene®の高い再現性を、(B)は3D-Gene®の定量RT-PCRとの高い相関性をそれぞれ示しています。さらに、(C)は3D-Gene®で胃癌 FFPEのmiRNA解析を実施して得られた結果をもとに作成した、miR-21高発現群、低発現群の生存曲線を示しています。生存曲線より、miR- 21高発現群において有意に予後不良であることが明らかとなりました。

図3 FFPEからのmiRNA解析例

(A)実験の再現性(マウス小脳RNA)、(B)定量RT-PCRとの比較(胃癌FFPE組織における腫瘍部と正常部のmiR-21
発現比)、(C) 胃癌FFPEのmiR-21高発現群、低発現群それぞれにおける生存曲線

受託解析ご依頼の際のFFPE検体送付方法について

(1) パラフィンブロックをお送りいただく場合

弊社にて薄切片を作製し、速やかにパラフィンブロックをご返却します。(組織、サイズ等により、切片の枚数は変わります)

(2) お客様が作製した薄切片をお送りいただく場合

弊社からお送りするサンプル送付用のチューブに切片を入れていただき、弊社までお送りいただきます。

※切片枚数の目安

組織が5mm角以上の場合:10µm厚のスライスを5枚以上
上記より小さい組織の場合:10µm厚のスライスを10枚以上